戦国関東血風録外伝「悲雲山中城 」
著者: 伊東潤 著
北条早雲公以来、坂東小田原武士の誇りは「民の幸せを第一とする志」にあり。
己れの権力拡大と栄華を至上とし、利害打算だけを起点に行動する俗物武士は、武士の道のけがれである。
その俗物どもがいま、百倍の大軍となって山中城に押し寄せる。
撃退は不可能。
「北条の志を後世に遺していさぎよく散華するのみ」智将間宮康俊は、神算鬼謀をかたむけて縄張り(設計)した山中城を、最後の死に場所と定めて、馬上さわやかに入城する。
そのころ秀吉と三成は家康を北の海に追い落とす秘策を語り合っていた。
そして家康と謀臣の本多正信は、いかにして豊臣に墓穴を掘らせるか密議を重ねていた。